日本文化の代表として茶道、花道、武道などが良く取り上げられますが、それ等には多くの流儀・流派があるのが特色です。そして、それぞれの流派や流儀によって表現の方法が違います。
それらの流儀・流派を長年に亘って受け継いで行くことが伝統であると考えられているので、その世界に居る人々に取っては、極当たり前なことになっているようです。
ところで、鍼灸や指圧などの手技の世界にも彼等と同じように、何かと流儀・流派を唱える者が居ます。例えば、指圧の場合でも、浪越指圧、医王会指圧、経絡指圧、八紘流指圧とか、その他色々と流派を唱える者達が居ます。これは鍼灸やあん摩・マッサージの業界でも同様なことが言えます。
私は上記に上げたような、花道や茶道、武道などの世界のことは良く知りませんが、流儀・流派を強く維持しようとする理由の一つとして、組織を維持拡大するために仲間を増やしたい、と言う意味合いもあるように感じます。
これは別に流儀・流派に限ったことではなく、目的はどうあれ、組織を作った途端に、その組織を維持拡大しようとする思惑が生まれるのは当たり前かも知れません。
ただ、手技の世界で流儀・流派を作って組織を拡大して仲間を増やすということが、果たして何の意味があるのか、と疑問に感じることがあります。手技の世界、即ち、治療の世界に於いて何故に流儀・流派が必要なのでしょうか・・・?
と言うのも、手技の世界、治療の世界に於いては何が大事なのかと言いいますと、患者さんの症状を改善することです。その為に、どんな流儀・流派を用いたかなどは、正直なところ患者さんには関係ないことだと思います。
患者さんに取って、治療師の流儀や流派が何であっても、結果として自分の症状が良くなれば、それでいいわけです。実に単純な話です。患者に取って、治療師は自分の症状を良くしてくれればいい存在であり、それ以上のものではない、とも言えます。
勿論、もっと違った側面もありますが、ここでは流儀・流派の問題を考える上で、その他の面は無視して話しています。ですから、治療師がどんな方法(流儀・流派)を用いてもいいから、何とかして下さい、と言うのが患者の本音だと思います。
それなのに、どうして自分の流儀・流派を唱えたがるのでしょうか。現実に手技の世界を見ていても、どんなに立派そうな流儀・流派を唱えていても、それで患者さんが皆、良くなっている訳ではありません。この世に完全なもの、ベストなものは無いのですから、それは当然の結果ではあります。
卑近な例ですが、故・増永先生がご生前中の医王会指圧センターには連日多くの患者さんが見えていましたが、その方々の中で1回しか治療に見えなかった人が沢山おられました。当時の医王会の評判が良かったにも拘わらずです。
その中には1回の治療で良くなった方もあったでしょうが、逆に医王会の指圧に満足出来なかった方も居たことが推察されます。幾ら増永先生が素晴らしい、医王会指圧は最高だと言っても、それを受け入れららない方もおられるわけです。
また、流儀・流派に拘る方は、どうしても他の流儀・流派を批判したり、ケナシたりして自分の立場を優位にしようとする人が多いものです。
例えば昔、浪越指圧の学校では、指圧は字の如く、ゆびの圧であるから指や手以外を使うのは邪道であると生徒に教えていました。
これは暗に、増永先生の指圧を非難するものでした。増永先生は肘や膝を始め全身を使って治療することを勧めていたからです。その浪越指圧学校では、親指の爪が剥がれるほど指を鍛えることを勧めていたぐらいです。
逆に、増永先生の方も、或る時期までは浪越指圧は理論が無いから駄目だと盛んに批判されていました。
ですが晩年は浪越指圧の良さを認めておられました。と言いますか、どのやり方もそれなりに良い所があることを認める発言をされていました。
とにかく、私が言いたいことは、手技の治療をする上において、流儀・流派は患者に取って何の意味も無いのではないかと言うことです。
患者が気持ちよく受けられて、症状が良くなる方法であれば、何でもいいのではないか、と言うのが私の見解です。
要するに、治療をする上に於いて一番大事なことは、患者と治療師との人間関係です。
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