§指圧百話(56)

指圧を通して体験して来た四方山ばなし

[56]  がん患者に付いて


日本では肺ガンを始めとしてガンに罹って亡くなる方が多いのが現実です。実数は定かに知りませんが、患者数もかなりなものだと思います。

しかし、残念なことには日本の医療機関では指圧のような手技を積極的に医療現場に取り入れることはしませんので、指圧師ががん患者の治療に当る機会は殆どありません。

唯、個人で指圧治療を行っている場合には患者の依頼で、ガンに罹患している方の治療を行うこともあると思います。現実に、私も何人かのガン患者の治療をした経験があります。

 

何年か前に肝臓ガンの末期だと言う男性が治療に見えたことがありました。ご自分は医者から末期だと知らされており、もう腹を括っておられるような雰囲気でした。

ですが、付き添って来られた奥さんの方は、何とかして、どんな方法を利用してでも回復させたいと言う思いを持っておられました。これは至極当然のことですよね。

とにかく何故、指圧治療に来られたのか伺ったところ、その方の弟さんが以前に胃ガンか肝臓ガンに罹られた時に、何とか自力で治そうとされて色々な方法を試されたそうです。

そうした時に、書店で故・増永静人先生の著書を見て、これだと気付かれたそうで、それを購入され、毎日腹部指圧を自分で行なったそうなんです。大変に信念の強い方だったんでしょうね。それを続ける内に、ガンを克服されたんだそうです。

 

そうした体験を持つ弟さんが、先の肝臓がんに罹ったお兄さんに対して、東京で増永先生の跡継ぎがいるだろうから、その人から指圧の治療を受けたらどうかと勧められたそうなんです。

その結果、この方がネット上で私のことを探されて、実際に治療に見えたと言うわけなんです。ですが、対面した時点で、可なりヒドイと感じたんです。

幾ら弟さんが自力でガンを克服したからと言って、この方にも指圧が効果があると言うことは言えません。実際、もう遅いと言う感じを強く持ちました。

特に足の方まで痛みが出ており、治療中も充分な姿勢が取れないほどでしたからね。その様子を見て、これ再入院した方がいいと感じましたので、そのように勧めたんです。

 

あなたもご存知でしょうが、西洋医学でも、東洋医学や代替医療でも、患者の状態によって顕著な効果があるものと、そうでないものがあります。

この方のように、弟さんに効果があったから、自分にも効果があるかも知れないと思われるのは、ちょっと違うところがあります。

何故なら、弟さんの真剣な取り組み方と、この方とでは違うからです。また、病状の進行状態も大きく違いますからね。

世間では、○○療法はガンに効くなどと言われることがありますが、それはたまたま、その人には効果があったと言う程度だと思います。決して普遍的なものではありません。

 

ところで、もう十年以上も前の話ですが、中年の乳がんの患者さんの出張治療を1年近く行ったことがあります。毎週1回のペースで伺ったんです。

最初に訪れた時は、乳がんが再発してベットに寝たきりの状態でした。トレイに立つのもご主人が車椅子に乗せて連れて行くような状態でした。

ですから指圧の治療を行うと言っても、ベットに仰向けの状態のまま行うしかありませんので、通常の指圧治療は行えませんでした。

そんな形で何ヶ月か通っている内に、段々症状が改善されてきて、何時しかトイレにご自分で行かれるようになられました。これは指圧で効果があったのかどうかは定かではありません。

何故なら、同時に丸山ワクチンや他のこともされていましたからね。言えば総合的に効果が出てきた、と言えるのではないでしょうか。

 

ともかく、そうやって更に治療を続ける内に、外出が出来るほどに回復されたんです。この時点になって、やはり指圧の効果があったのかも知れないと感じるようになりました。

ですが、それ以来、私も治療に伺うのを止めてしまいました。どうして止めたのかは記憶にありませんが、お互いに、これくらいでいいだろうと言う思いがあったのだと思います。

その後、数ヶ月して、この方が亡くなったことを誰かから知らされたんです。それは、やはり寿命であったと直感しました。

 

で、最近、もう一人ガンだと言って治療に見えた方があります。この方は40代ですが、8年前に直腸がんと診断され、手術を受けておられたんです。

その時に小腸からの人工肛門も付けられたんです。その後、別段、体調が悪くなったりすることも無く普通に仕事もされて来たんです。

で、2008年になって少々体調を崩したので検診を受けたら、もう肺や肝臓に転移をしており、手の打ちようが無いと言われ、抗がん剤だけを服用していると言うことでした。

こんなにヒドイと思われる状態なのに、ご本人はいたって平気で、痛みも辛さも無いんですと淡々とされていたので、こちらが驚いてしまったんです。

 

指圧の治療の際も、気を使って、大変でしたねと言いましたら、いえ、そんなに言われる程ではないんですよ、余り気にしないで下さいと言われたんですよ。

これは決して強がって言われたのではなく、実に穏やかに淡々と話されたんです。これを見て、この方は霊位・霊性の高い方だと感じました。

ですが、このようにガンの末期だと診断されるようなヒドイ状況になっているのは、可なりの因縁(家系やご本人の)を背負っておられるんだな、と思いました。

その旨を伝えましたら、それも素直に聞いておられました。取り敢えずは今後も指圧の治療を続けてみたらいいと勧めたわけです。今後どのように展開して行くのか、私にも分かりません。

 

先ほども言いましたが、指圧治療でガンが良くなるとかならないとかは、ハッキリとは言えません。患者と治療師との信頼関係なども大きく関係してきますからね。

一般的に、指圧の場合は副交感神経を優位にする効果があると言われていますから、免疫力を高める効果もある点から考えて、ガンのような症状にもそれなりの効果があるのではと考えます。

ただし、或る程度継続して行うことが大切です。それと、治る治らないではなく、指圧を行なうことで患者が心身ともにリラックスすることは確かですから、その点でも指圧を行うことはいいことではないでしょうか。

 

そう言えば、昔のことですが、外人の年配の女性が末期がんで自宅で家族に見守られている状態の中、家族から一度指圧をして欲しいと依頼があったんです。

それで寝たきりになっている患者に、ゆっくりと身体を触る程度の軽い圧で全身の治療(仰向けだけ)を行ったんです。するとズッと気持ち良さそうに眠っておられました。

その姿を見た家族から感謝されて帰ってきたんですが、その数日後に他界されたことを家族から聞かされたんです。その時、最後まで、親を少しでも楽な状態にさせてあげたいと指圧治療を依頼された家族の気持ちに感動したことを思い出しました。

このように、指圧治療は末期がんの患者にたいする、「ターミナルケアー」として大変に有効ではないかと感じている次第です。




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