§指圧百話(35)

指圧を通して体験して来た四方山ばなし

[35] 外国人の講座(2)


前回、色々な大使館に出入りして指圧の講座や治療をしてきたことを話しましたが、中でもイギリス大使館には度々伺いました。

麹町のイギリス大使館内には大使館員の為の住宅が結構ありました。この大使館は皇居のお堀にも近く、周囲は桜の名所でもあります。

大使館の中にも可なりの数の桜の木があり、桜の見頃になると大使館主催で花見の宴が毎年開かれていました。

筆者はいまでも良く、この大使館の反対側(お堀側)を通って三宅坂から桜田門、皇居広場へと散歩に出掛けるんです。その時、何時も、この大使館にはよく来たなぁと思い出すんです。

イギリス大使館では数年に亘り、何組かのグループに指圧の講座を行いました。殆どがイギリス人でしたが、中には大使館で働いていた日本人もおりました。

 

大使館で行なったのは殆どが指圧の講座でしたが、あるグループの中の男性生徒さんが治療を受けたいと言うことで、彼の住まいに定期的に治療に伺いました。

当初、この男性は大使館の側のマンションに住んでいましたので、そちらに何回も伺いました。何回が治療をやる内に彼の家庭の事情も話してくれるようになりました。

家族をイギリスに残して来てるとは言っていましたが、どうも離婚したのではないかと思える感じでした。そして息子との折り合いが悪いようにも見えました。

暫くして、彼は大使館内の住宅に住めるようになりましたので、筆者もそちらに治療に伺うようになったんです。何回か、そちらで治療をしました。


その後、治療が或る期間、中止になりました。そして、ある時に再び呼ばれて治療に伺ったら、近々、転勤になって本国に帰ると言われたんです。

大使館員は世界中を転勤して回るのが仕事ですから、筆者としても止むを得ないことだと理解しました。でも外国人の場合は、親しくなると皆、転勤などで帰国しますので、ちょっと寂しいですね。

彼が帰国して暫く経ってから、彼と同じクラスで指圧を勉強していた大使館で働いていた日本人の方から驚きの話を聞かされました。

何と彼が麻薬か何かの罪で本国で逮捕された、と言う話だったんです。筆者もその女性も彼のことをよく知っていましたので、あの実直な感じの人がどうして・・・と訝りました。

 

噂だけで本当のことは分かりませんでしたが、何処の国の大使館でも、大使館特権があり、麻薬などの密輸入は頻繁に行なわれていると言う話はよく聞くところです。

彼がいきなり、急に本国に返されたのも、そのような犯罪にからむ嫌疑があったからなのかも知れません。筆者には伺い知れないところです。

ところが、その後、彼が逮捕されたのは息子の所為だったと言う噂が伝わってきました。息子の麻薬関係の罪を被って逮捕されたのではないか、と言うものでした。

飽く迄も噂の域を出ない話でしたが、それなら何となく納得できるなぁと思ったんです。あの人が本当の犯罪者とは、とても考えられませんでしたからねぇ。

 

そんなことがあって、1~2年経ってからです、大使館で働いていた日本人女性から連絡があったんです。何と、今度はその男性が死亡したと言う話でした。

これには少々驚いてしまいました。どのような経緯で亡くなったのかは分かりませんでしたが、何であの彼が、こうも立て続けに不幸に見舞われたんだろうと、人ごとではありませんでした。

これまでに筆者は多くの外国人に指圧の講座をしたり、治療をしてきましたが、親しくしていた方が亡くなったと聞かされたのは、その時が初めてでした。

彼の晩年を自分で見聞きした訳ではありませんので、余計に何でだろうと言う思いが募るはかりでした。正に「人生いろいろ」ですねえ・・・。


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