◇失敗は成功の元?

どんな仕事でもそうでしょうが、長年やっていると、気まずかったことや思惑とは違うことに出会うことが結構あります。

それを失敗談と取るか、いい経験・体験と取るかによってその後の在り方が変わってきますが、筆者の場合もその手の体験があります。

それ等は、もう何十年も前のことで、プロの指圧師になって日が浅い頃のことです。まだまだ、体験が足りない為に思わぬ失敗を重ねました。

 

その頃、普段から色々と付き合いのあった方の奥様の出張治療を頼まれて、その方の自宅に伺いました。

奥様も以前からの顔見知りだったので、直ぐに指圧の治療に取り掛かりました。奥様も特別にヒドイ症状があるとも言われませんでした。

ただ肩が凝るとかの一般的な症状しか言われなかったので、先ずは腹部の指圧をして、何時も通り全身の指圧をしました。

それで何事も無く治療を終えて、お暇をしたわけです。ところが後刻、そのご主人からビックリする話を聞かされたんです。

 

何と奥様が治療の後、腹痛を訴えて救急車で入院されたと言ぅんです。何事かと思ったら、急性盲腸炎だったんですね。

もう後の祭りで、筆者の治療で虫垂炎になったような印象になってしまったんです。事前に虫垂炎の気があると聞いていれば、もっと用心して事に当たったんですがねぇ・・・。

例え急性の盲腸炎の場合でも、数日前からお腹がオカシイとか、何かのサインがある筈なんです。その奥様はその辺を気付かれなかったのでしょうね。

それ以来、そのご主人に会っても何となく、悪いことをしたような気がして、何となく気まずい思いに執われてしまったんです。

勿論、ご主人は決して非難をされたわけでは無いのですが、お互いに長い知り合いですので、辛いですよね、こういう時はねぇ。

今考えても、それ程強い圧を腹部に与えたことは無いと思うのですが、その時は奥様の虫垂も化膿が酷くて爆発寸前だったのかも知れません。

でもこれ以来、患者さんに対して事前に病歴とか、最近の症状について詳しく聞くようになりました。苦い体験でしたが、いい薬になった訳です。


ある時、医王会指圧センターでのこと、ある常連の中年の患者さんの治療をした時のことです。横向きで相手の前胸部の治療をしていました。

当時は大変に多忙で、季節も暑い時期だったので、疲れも溜まっていたのかも知れません。その方の胸部の肺経のツボの辺りを肘で押していた時に、プツンと何か音がしたんです。

その時は余り気にせずに他の箇所の治療に移っていったんです。ですが、途中から患者さんが何か胸が痛いと言い出したんです。

どうやら、先ほどの左前胸部の筋肉を傷めたらしいと気付きました。自分ではそれ程の圧では無かったと思ったんですが、相手の身体がその圧を受け入れる状態では無かったんですね。

その時はまだ駆け出しでしたから、直ぐに増永先生にバトンタッチして様子を見てもらったんです。一応軽いスジ違いの状態になったようで、その後簡単に修復していただいたんです。

 

大したことでなくて良かったと思うと同時に、自分が疲れている時に、肘を使うのは用心をしないといけないと自戒したんです。

やはり指や手と違って、肘や膝を使うと思わぬ力が入るものですから、より慎重に対処しないとマズイですね。特に、自分の体調が良くない時は更なる注意がいります。


とにかく、指圧のような手技を行なう時には、「絶対に相手を痛めたり、傷つけたりしてはいけない」ことを痛切に感じました。

ですから、今でも指圧を勉強に来る生徒さんには、必ず、こうした点の注意はしています。この意味からも、巷で行なわれているような強モミの指圧は感心できません。



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