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ある時、40代のドイツ人女性が他の方の紹介で指圧の講座を受けに来られました。
どちらかと言うと無口な方で、自分からペラペラ喋ると言うタイプでありませんでした。確か、ドイツでのフィジヲセラピー(物理療法士)の資格を持っていると言うことでした。
初級の12回コースから始めたんですが、毎回熱心に取り組んでおられました。筆者の所では主に指圧の全身治療のやり方を順序立てて教えており、余り理論的なことは教えていないんです。
それでも、今まで他で覚えて来られたことや、本などで仕入れた知識から色々東洋医学的なことを質問してこられたので、熱心な方だと感じていたんです。
ただ、実際に指圧の練習をしてみると、何か物足りないものを感じたんです。どうも圧し方が足りないと言うか、確りと体重を乗せて圧していないんです。
そのことを注意して、指圧は体重を利用して、ゆっくりと、深く押す必要があると教えたんですが、毎回、圧し方が表面的で、こちらに伝わって来るものが無かったんです。
それと、彼女の手が冷たいことも気になりました。それで余計に受けていて、彼女の温かみを感じなかったんですね。
何と言っても、指圧の良さは、深部にまで圧が浸透して、何とも言えない温かみが伝わってくることなんですが、彼女からはそれが伝わってこなかったんです。
何故だろうと思いましたが、一つには彼女が大変に神経質と言うか、物事にこだわり、気分転換が下手な人ではないかと感じたんです。
それと、指圧を熱心に学ぶ姿勢の半面、先ほども言いましたように、圧し方がおざなりと言うか、深部に圧が通じない、表面的なものに終っていたんです。
ですから、本当にやる気があるのか無いのか、と訝しく思ったほどです。でも、余り根堀り葉掘り個人的なことを聞くわけにも行きませんから、何となく毎回中途半端な感じのまま終っていたんです。
こんな状態のまま、初級が終わり、中級も終了し、更に上級までも終了されたんです。それほど熱心に取り組んでおられたんです。表面上はね・・・。
で、その後も何回か指圧の治療を受けにこられていたんですが、ある時依頼、急に来られなくなったんですよ。何かあったのかと気にはしていたんですが、知りようがありませんでした。
そんな折リ、彼女の知人も講習を受けに来ておられ、その人から、そのドイツ人女性は最近一切、指圧をしなくなったらしい、と言う話を聞いたんです。
その理由が、その彼女が占星術が好きで、占い師から、ご主人に指圧をすると具合が悪くなると言われて、それ以来、指圧をやらなくなったらしいと聞かされたんです。
何とバカなことを言う占い師だと思いましたが、彼女自身がそんな占星術師の言うことを鵜呑みにしている以上、こちらとしては何おか言わんやでした。
そうこうしている内に半年ほど過ぎたころ、そのドイツ人女性から指圧を受けたいと言う電話があったんですよ。先述した占い師の件がありましたので、彼女にどういう気持ちの変化があったんだろうかと、ちょっと警戒気分になったんです。
すると、再会してみると、何だか顔が引きつったようで、以前の彼女のような雰囲気が無かったんです。当然、治療が終っても、ムスッとした感じで、挨拶もそこそこに変えられたんです。
やっぱり、未だにわだかまりを持っているんだなと感じました。でも、彼女が勝手に占い師のことを信じているだけですから、こちらとしては何もすることは出来ません。
それから又、日が経ってから、ご主人の転勤で香港に行くことになり、その前にもう一度指圧を受けたいと言って来られたんです。
そので会って見ると、スッカリ感じが変わり、最初に来られていた時のように、明るく、自然な感じで、何も違和感を感じませんでした。何か憑き物でも落ちたといった状態でした。
治療が終った後、本当に指圧は気持ちがいいですね。こんなことなら、もっと早くに来れば良かった、としみじみ言われたんです。それ以来、日本を離れるまで毎週のように治療に見えたんですよ。
世の中には情緒不安な方が多いですが、この方のように極端に態度で表わした方は、多くの生徒さんの中でも始めてでした。本当に人間は感情の動物だと痛感しました。
ところで、この方には感謝しなければならないことがあるんです。と言うもの、この方が御礼にと言って下さったヒーリングミュージックのCDが大変に評判がいいんです。
ドイツ人の演奏家が作ったアルバムですが、BG音楽として流していると、どなたも関心を持たれて、誰の曲かと聞かれるんです。
それで、これこれだと説明して、CDジャケット見せてあげると、殆どの方がそれを控えて後で購入されたりするんです。ですから、彼女のことは、このCDがある限り忘れることが無いんです。
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