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前にも言いましたが、筆者は医王会で働くようになった当初から、もう何年もやっているような態度で患者の応対をしていました。
ですが実際に治療をやって見ると、最初は一人の治療を終えるのに2時間半も掛かってしまいました。これは講習で習った通りを忠実にやっていた為です。
周りの同僚や先輩は1時間半ぐらいで終了するのに、どうして自分だけこんなに時間が掛かるのかと、疑問に思いました。
普通に考えると、長時間やった方が患者も喜ぶと思うかも知れませんが、実はそうではありません。治療効果は時間の長短で計れるものではないからです。
巷の治療院などでは、身体の硬い患者が1時間の治療で満足いかず、90分とか120分の治療を要求する方がありますが、実のところ、それ程の効果はありません。効いたと言う錯覚です。
治療と言う面から言ぅと、病人の方には30分の治療でも効果があがります。半健康人の場合は1時間程度で十分です。一回の時間よりも、何回も継続して治療をする方が効果的です。
とにかく、2時間以上も掛かると、患者も疲れてしまいますし、治療師も疲労してしまい、いい結果は期待できません。筆者は当初、この調子で3人も治療すれば結構と言ぅ具合でした。
その後、日を重ねる毎に少しずつ治療時間を短縮できるようになりました。段々と要領が良くなって行ったんですね。のべつまくなしに、ゆっくり押すのではなく、強弱を付けて、リズム良くやれるようになったんです。
その内に、医王会の指圧は大変にリズムカルで流れるように出来るものだと悟りました。患者の上で音楽のリズムを奏でるようなものだと思いました。
こんな調子でドンドンと、自然に治療時間を短縮して行き、最後には1時間で終るようになりました。その代わり、治療中は可なり集中してやりました。
当時の所員の中には女性も結構居りましたので、彼等は患者と話しながら治療をする為に勢い、治療時間も長めになり、1時間半は要していました。
患者と互いにペラペラ喋りながら治療することも、ある場合にはコミュニケーションを図る意味でいいのかも知れませんが、常時行なうことはどうなんでしょうか・・・。
このように治療時間が思うように短縮出来ないでいた時期です。常連の口うるさい患者さんの治療を任されました。
ある会社の社長で、年配の方でしたが、小柄ですが、厳つい顔をして、なかなか取っ付き難い感じの方でした。
ちょっとやり難いなぁと思いながらも治療を始めたんですが、途中で、そこはそうやるんじゃないだろうと色々と注意をされたんです。
常連ですし、受け慣れておられたんで、筆者のやり方が歯がゆかったんでしょうね。遠慮会釈なく、文句を言われてしまったんです。
長時間掛けて、大汗をかきながら何とか治療を終えましたが、本当に心身共に疲れてしまいました。でも、これがキッカケでその後も何回かやらせてもらうようになったんです。
出会いとは面白いもんですね。その後、銀座の治療所の方でも度々、指名を頂いてこの方の治療をするようになったんです。
外見は厳つい方でしたが、根はストレートな方で、色々喋っている内に気に入って頂くようになったんですね。そうなると以心伝心で大変やり易くなったんです。
その後も、この方には目を掛けて頂き、ご自宅の方に出張治療に伺ったり、伊豆の別荘の方にも呼ばれたりするようになりました。
また、ある夏には筆者の家族4人を那須の別荘に招待をして頂いたりしました。それも交通費まで負担をして下さったんです。
この方が住んでおられた所は東京の成城と言ぅ高級住宅街の一画で、数寄屋造りの屋敷と庭園が素晴らしい所でした。
有名な京都の建築家の設計だと聞いていましたが、その方が他界されてからは、ご遺族がこのお屋敷と庭園を世田谷区に寄付されたそうです。
この方は生前、やり手の社長さんで、会社でも「横っ飛び」と言って社員にハッパを掛けておられたそうです。だらだら歩いて来るのではなく、横に飛ぶようにして早く来いと言ぅことなんでしょうね。
短気とは違うんですが、何ごとも素早くやるように指導されていたようです。筆者が治療する時には、流石にそのようなことは言われませんでしたよ。
でもねぇ、このようなやり手の方の奥さんは必ずと言っていいほど、病気をしておられる方が多いんですよ。やはり、やきもきされることが多いのではないでしょうかねぇ。
(つづく)
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